リバタリアニズムとは?5分でざっと理解する

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リバタリアニズムを一言で言うと?

様々な政治思想は「経済的自由」と「個人的自由」をどの程度尊重するかである程度分類可能ですが、リバタリアニズムは経済的自由と個人的自由のいずれも最大限尊重する思想であるといえます。

以下の表は、リバタリアニズムの思想を説明する際によく使われる図で、様々な政治思想を「経済的自由」と「個人的自由」の観点から分類したものです。ノーラン・チャートと呼ばれ、リバタリアニズムの立ち位置がわかりやすく表れています。

注意すべき点として、この図をそのまま受け入れると「自由がない」=「束縛されている」といったネガティブな印象を抱きがちですが(もちろんリバタリアン的にはネガティブですが)、自由の代わりに平等を重んじていることが挙げられます。つまるところ政治思想はさまざまな分野における自由と平等のバランスを考えるわけですが、リバタリアニズムは個人と経済における自由を重んじるわけです。逆に言うと、個人の財産に対する権利は平等である、とも言えます。

様々なリバタリアニズムを「度合い」と「理由」で分類する

「リベラリズム」が様々な論者によって指し示す意味が異なるのと同じように、一言に「リバタリアニズム」といっても、指し示す思想は論者によって変わってきます。

そこで、日本のリバタリアニズム研究の第1人者である森村進先生は、『自由はどこまで可能か リバタリアニズム入門』で「度合い」と「理由」の二つの要素で分類しています。

3つの「度合い」

リバタリアニズムを表す「度合い」としては、過激なものから順番に「アナルコキャピタリズム・市場アナーキズム」「最小国家論」「古典的自由主義」の3つに分かれます。一般的にリバタリアニズムと呼称されるときは「最小国家論」「古典的自由主義」のいずれかを指す場合が多く、「アナルコキャピタリズム・市場アナーキズム」を指す場合は固有の名称が用いられます。

名称度合い内容
アナルコキャピタリズム
市場アナーキズム
過激「国家は不要。市場さえあればいい」
最小国家論中間「国家は国防や司法だけ」
「市場を守れ」
古典的自由主義穏健「最低限の福祉も必要だよね」
(現在の国家よりはもっと少なく)

3つの「理由」

リバタリアニズムを擁護する理由も論者によって分かれてきますが、大きく分けて「自然権論」「帰結主義」「契約論」の3つが代表的です。もちろん、論者によっては複数の理由にまたがっていることもあります。

政治哲学的なアプローチをとる人は自然権論、経済学的なアプローチを帰結主義に由来する人が多いです。

名称内容
自然権論・税の再分配は人権侵害
・自己所有権:身体と能力は自分のもの→労働の成果物や得られた財産も自分のもの
帰結主義・経済学のオーストリア学派によく見られる
・国家がコントロールするより市場に任せるほうがうまくいく
契約論・社会のための道徳として適している
・個々人の考えを尊重するなら社会での考えはミニマムに

まとめ

メディアやSNS(特にTwitter)を見ると、富裕層が自らの財産を守るためにリバタリアニズムの主張をしているのをしばし散見されますが、リバタリアニズムは人々が住む社会に関わる政治をどのように行っていくかという、政治の根本に関わる政治哲学であり、万人とすべての社会にとってかかわりがあります。

私たちは多かれ少なかれ税金を支払い、その対価として公共サービスを受け取っています。その税金をどのように使っていくのか、あるいは、そもそも税金を取るべきか、というのは、国民全員がかかわりのある話です。リバタリアニズムは、「そもそも国家の役割ってなんなの?」というところから問い直して、国家が担うべき役割をなるべく少なくとどめる思想だといえます。

参考文献

  • キムリッカ W., 千葉眞, and 岡崎晴輝. 2005. 新版 現代政治理論. 日本経済評論社.
  • 森村進. 2001. 自由はどこまで可能か: リバタリアニズム入門. 講談社.
  • ———. 2008. “ジャン・ナーヴソンの契約論的リバタリアニズム.” 一橋法学 7 (2): 199–237.
  • 穐山守夫, and Others. 2006. “新自由主義の意義と問題点.” 千葉商大論叢 44 (2): 177–201.
  • Narveson, Jan. 2009. “なぜ自由か?.” In リバタリアニズムの多面体, edited by 森村進, 1–25.

この中でも『自由はどこまで可能か: リバタリアニズム入門』は、リバタリアニズム研究の第1人者である森村先生が著した入門書であり、リバタリアニズムの概観をつかむことができます。

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この記事を書いた人

東京大学文学部卒。
本サイトでは、リバタリアニズムと呼ばれる思想について、私が勉強した内容を中心に発信しております。
気になる論文を紹介したり、研究者にインタビューするYouTubeチャンネルも運営しております。

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