リバタリアン経営者が学校教育に反対する理由

ネット家庭教師塾「毎日学習会」を営む林さんは、リバタリアンを公言しています。

今回は、異色のリバタリアン経営者が学校教育に反対する理由についてインタビューしました。

目次

リバタリアニズムとの出会い

笹谷

最初に林さんのリバタリアニズムとの出会いについてお伺いしてもよろしいでしょうか。

林さん

元々おじいちゃんが日本共産党員で、小さいときから東大に入って
共産党の国会議員になれって言われながら育ってきたんです。
「東大目指すかー」って頑張って勉強したんですけれども、なかなか上手くいかなかったんですね。

林さん

慶応のSFCっていうとこに入ったんですけれども、ある日キャンパスを歩いていたら、竹中平蔵先生が歩いているわけですよ

林さん

慶應の先生として戻ってきたっていう風な話で、これはちょっと面白そうだなと。
東大いけなかったからもう共産党で出世するのは無理だから、ちょっと竹中先生の話聞いてみようと思って、授業参加したら非常に面白くてですね。
それがリバタリアニズムとの出会いですね。

笹谷

家のルーツがありながらもちょっと衝撃的な出会いと言うか、、、笑

林さん

あれほど悪く言われてるので、どんな人が一回見てみたかったったのはやっぱりありましたね

リバタリアンとして考えていること

林さん

私は当然今の政府っていうのはあったほうがいいし、あることが大前提なんですよ。

林さん

実際もうこれだけ高齢者が多いと、小さな政府を作ろうってのは無理なんだけど、これ以上大きくならないようにするってやっぱり大事だなと思っています。

林さん

日本のGDPは400兆円とかそれぐらいの国ですけど(編注:2019年の日本のGDPは約5兆ドル)国の予算180兆円あるんですよ。(編注:2021年の一般会計は約100兆円、特別会計との純計は約230兆円)
国の経済の半分が国の予算なんですよ。
明らかに大きな政府すぎる。東日本大震災の時の予算のまんま来てる。

林さん

緊急時の予算だったのにそれがそのまま残ってるって状態になっていて、非常に多いんですけど、これ以上大きな政府にならないようにするっていうのが大事かなと考えています。

公立学校・教員免許制度に反対の理由

林さん

公立学校っていうのは基本的に日本国籍を持った人しか、少なくも管理職になれないわけですね。実際のところ先生になるのも難しい。

林さん

これから移民社会ができてくると、どうしても日本人の先生ってのは
無意識的にでもやっぱり差別しちゃうんですよ。
韓国とか朝鮮人とかの子に対して。

やっぱり公立学校ではなくて民営の塾であれば、学習塾っていうのは高いお月謝払ってくれる人にそんなこと絶対言いませんから。

日本人でも韓国人でも学習塾だったら経営できるということを考える時に、これから移民が増えていく中で差別が残るような構造を作るのはよくない。

林さん

もう一つは教員免許制度に関して。

学校の教員免許を持ってる人は必ずしも教育者として優秀なわけではない。

学校の成績とかそういったものをどれぐらいあげたかとかってのは、ある程度明示化できるから、別に免許で縛る必要はない。

林さん

子供は親を選べないから、教育を受ける権利は守るべきなんです。

例えば子供達にクーポンをあげる。月に10万円、好きな習い事していいですよ、好きな塾行っていいですよ。

もちろんその最低限やんなきゃいけないことはちゃんと指定するんだけども、それを自由に使っていいですよ。で、選ばれた先生がそれによって収入を得る。

そういう形にするのがやっぱり一番良くてですね、公設民営って考え方をするんですけど、必ずしも教育をするのは公務員である必要はない。

民間人でもやっぱり非常に競争の中でお客様の満足が得られるサービスをできる人はいるはずで、そういった人たちに対しては資金が回るようにするっていうことが非常に大事だと考えてます。

笹谷

確かミルトン・フリードマンが、公教育に関して民営化していくべきだという内容を『資本主義と自由』で書いてました。

ただ、教育業に携わりつつ民営化という話は重みが違いますね。

林さん

ポジショントークという風に見られることもあるかもしれない笑

大阪でやってるように、例えば私立の高校の学費を無償化するとか
それによってなるべく民営の部分をを大きくしていくと。

もちろんその責任ある分野ではあるので、詐欺師みたいな人が入ってこないように、その私立の高校を作れるとか、一定水準の参入障壁ってのも設けた方がいいかもしれないです。

ただやっぱり、なるべくいろんな選択肢の中から選べるようにする。

例えばいじめられたら他の学校に変えればいいじゃんといった形で、塾を変えるのと同じように学校もその時その時の自分の好みに合わせて変えていくような、そういう社会を作っていきたいなという風に思っています。

今コツコツ塾やりつつ、ちょっとそういう勉強会に参加したりとか政治家に献金したりとかっていうこともしながらやってます。

笹谷

現在の公教育制度が「ちょっともう無理なんじゃないか」みたいな話は現状でも結構出てると思うんです。

ただ、リバタリアニズムの視点から公教育を民営化していくっていうところを主張している人は新鮮ですね。

リバタリアニズムは生き方である

林さん

日本の場合、現実的にやっぱり大きな政府を支持されている方が圧倒的に多いので、こういうネット家庭教師をしつつ、将来的にはインターナショナルスクールを経営したいなと思ってます。

規制がない分野でやっていくのが、1個人としては一番妥当なやり方かなと思ってます。

リバタリアニズムってのは政治思想であると同時に生き方なんですよね。

共産主義を実践しようって思うのはすごい大変なことですけど、リバタリアニズムは実際にできます。

自分の生き方そのものっていうのは、リバタリアニズムという形だと思ってます。

「リバタリアニズムは富裕層・先進国の思想」という批判に対して

笹谷

リバタリアニズムに対する批判として、「リバタリアニズムは富裕層の考え方だ」「先進国の考え方だ」みたいな批判ってのは、結構あげられると思うんですね。

というのも、福祉は誰がやるんですとか、税金を再分配で平等の方がいいんじゃないかっていう人は結構いると思うんですけれども、この一般的な批判に対してどう思われますか。

林さん

私はむしろ逆だと思っています。

公的に公務員がサービスをするよりも、民間人がサービスした方がより多くの人により安くより良いサービスを提供できます。

政府の失敗があると同時に、市場の失敗というのもあるので、その市場の失敗を防ぐための策ってのは、しっかり取らなきゃいけないんですけど。

ちゃんとそういったものが機能していれば、そういった批判は当たらないかなっていう風に思います。

基本的には民間人がやった方が、良いサービスをより安く提供できます。

読者にメッセージ

林さん

日本の政治思想ってもう多分本当に99%とかが大きな政府なんですよね。

小さな政府を主張している人って実はほとんどいない。

維新はそうではないけども、自民党と立憲民主党、公明党、共産党、社民党って見てみると実は日本共産党と変わらないんですよ。

日本共産党が言ってることを、ちょっと表現変えたりとか、ちょっと宗教っぽくしたりとか、ちょっとカスタマイズして言ってるだけで、基本的には自民党から共産党まで全部オール共産党。

世界的にみても共産主義的な日本の政治シーンの中で、小さな政府っていう考え方があることをまず知っていただきたいなと思います。

林さん

あと竹中先生に関しても非常に批判する方多いんですけども、実際に竹中平蔵先生に会ってみてほしいなと思いますね。勉強会やってますので、実物と会えますから。ぜひご参加頂いたですね
これ以上(政府を)大きくしないようにするにはどうすればいいかを見ていただくのが非常に大事なのかなと思います。

私の会社のスタッフは私がお金出しますので、ぜひうちのスタッフになっていただいて、一緒に仕事しながらリバタリアニズム学べればなと思います。
竹中流21世紀リーダー塾

編集後記:ミルトン・フリードマンの思想に裏付けされたリバタリアン

林さんとのインタビューで印象的だったのは、やはり学校教育制度および教育免許制度に反対する点である。

これは、ミルトン・フリードマンが 『資本主義と自由』 においても同様の内容が記されている。(第6章「教育における政府の役割」第7章「資本主義と差別」第9章「職業免許制度」)

特に「教育に使えるクーポン配布」という発想は、「教育バウチャー制度」と呼ばれるものであり、日本でも定期的に話題には上がるものの、いまだ検討段階を出ていない。(参考:教育バウチャーに関する研究会 教育バウチャーに関する検討状況について 1.主な論点及び意見-文部科学省

しかし、近年では通信制高校に通う学生が年々増加しており、教育制度に求めるニーズは年々多様化している。

個人的にも、角川ドワンゴが運営する通信制高校であるN高生と複数会話したことがあるが、通常の高校に収まらないニーズの受け入れ先として興味深い存在だと感じている。

そもそも現行の学校教育、特に義務教育における集団授業という制度自体、産業革命以降に成立したものであるが、今後個人のニーズの多様化や少子化の傾向を考えると、個々人の進度に応じた授業が展開される、いわば寺子屋式を検討する必要があると筆者は考える。

そうした義務教育の見直しのタイミングで、教育バウチャー制度も検討事項として挙がってくるのではないかと予測している。

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

東京大学文学部卒。
本サイトでは、リバタリアニズムと呼ばれる思想について、私が勉強した内容を中心に発信しております。
気になる論文を紹介したり、研究者にインタビューするYouTubeチャンネルも運営しております。

コメント

コメントする

目次
閉じる