リバタリアニズムにおける結婚の考え方

以下は、下記参考文献のうち、結婚に関する部分の要約とメモである。

Cohen, A. J., & Hall, L. (2022). Libertarianism, the Family, and Children. In B. Ferguson & M. Zwolinski (Eds.), The Routledge Companion to Libertarianism (pp. 336–350). 2022: Routledge.

目次

要約

リバタリアンは、結婚は「同意した大人同士の契約である」という枠組みの中で、「手続き的契約主義的アプローチ」(結婚は宗教・政治な内容ではなく中立的なもの。契約の中身より、同意の有無が焦点。)と「実体的契約主義的アプローチ」(同意に加えて、男女の不平等の解消することに重点を置く。例えば主従関係的な結婚の形態は認めない)に分かれることが多い。いずれにせよ、結婚は成人の私的な契約であるため国家が結婚の促進や認可に関与すべきではなく、紛争を解決することに役割をとどめるべき、という点で一致している。結婚を私的な契約と見なすことで、多様な個人のニーズに応えられるとともに、結婚に対する不公平な優遇措置がもたらす不平等をなくすことができる。

とはいえ、長い間国家によって結婚が国家に管理され、法的な結婚に関連する様々な制度(税や福祉、社会保障)が構築されているため、現実的に私的な契約とみなすためには諸制度の見直しも求められる。また、性的同意や婚姻同意の年齢、結婚できる年齢や許容条件についても意見が分かれる。結婚の不安定さが子供に与える影響、結婚が産み出す外部性、結婚契約の解消、結婚生活における暴力への介入など、私的な契約と見なすことに対しての懸念点は山積している。

保守的なリバタリアンは契約主義的な結婚観に対して批判的である。結婚は単なる契約に留まらず、子育てや教育、介護における公共的な機能を果たしており、社会や経済の安定に寄与しているとみなしている。

メモ

現実として私的な契約と見なすのは無理だと思うし、弊害のほうが上回るとは思うが、このようなラディカルな見方は一考の余地はあると思う。具体的には、現行の結婚の枠組みに対して、任意の成人2人による法的な契約とすることは、リバタリアンの「同意した大人同士の契約である」という考え方を踏襲しつつ、異性婚に対する同性婚の不平等を解消できるのではないか。

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この記事を書いた人

東京大学文学部卒。
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